WORKS

T. S. エリオット 詩  宇野亞喜良 画  佐藤 亨 訳

「猫はみんな詩になりうる」──T. S. エリオット

ミュージカル「キャッツ」の原作として知られる世界一有名な猫詩集が、日本を代表するイラストレーター・宇野亞喜良氏の魅惑のオリジナル・カラー挿絵と、エリオット研究の泰斗・佐藤亨氏による生き生きとした訳文を得てよみがえる‼︎

この詩集のしょっぱなの詩は「猫を名づける」。猫たちがそれぞれでもつ「固有名」というものをめぐって書かれた詩です。ところで、「牛を固有名で呼んでいるものにとっては、それを殺すことは困難であろう」──そうかつて柄谷行人なども言っていますが(『探究II』)、じぶんで殺さないまでも、「固有名」で呼びながらその肉を料理して食べることだって難しいでしょ。だけど、どんな名前であれ、やっぱり冷酷な管理のための記号として働いたりもします。猫について牛とおなじように考えるひとは少ないでしょうけれど、頭をすりすりしながら足もとにまとわりついてくるそのなにものかを、どんな名前で呼んだらいいか、どう名づければそれが暴力にならないのか、それはとっても難しい哲学的問題。

この詩集の最後のほうには、「猫に話しかける」という詩も出てきます。いかに名づけの暴力を回避しつつ「猫に話しかける」ことができるのか。そう問いかけるこの詩集はまた別の本への参照をも促します。たとえば、秘密の名前を通して現れる「新しい天使」について書かれたベンヤミンの「アゲシラウス・サンタンデル」。そして「チャビともチビともチャーちゃんともチャーコとも言う」で始まり、より直接に愛猫との「肉体関係」を描いた福山知佐子のエッセイ(『反絵、触れる、けだもののフラボン』)。

こうした脱線も猫につられてのこと。ともあれ、これもまたよく言われることですが、深い思想は詩が探照灯になってしか伝えられないのかもしれません。みなさんもまずはこの詩集に登場する猫たちにあざむかれ、からかわれ、遊ばれながら、上手に「猫に話しかける」すべを教わりましょう。

定価:本体1800円+税

A5変形(141mm×210mm)/上製

88ページ(オールカラーですニャン)

ブックデザイン:佐野裕哉

ISBN978-4-9912228-2-5 C0098

全国の書店でお求めいただけます。店頭にない場合はお店の方に取り寄せをお願いしてみてください。

織田達朗評論選

丸木位里・俊夫妻による『原爆の図』を寸毫の仮借なく批判した表題作、
その他、未だ読み解かれざる美術評論五編を収める。


 戦後、日本美術の状況の背後に隠された問題点を剔抉する批評があまりに辛辣であったがために、その世界に居場所を失い、追放された、織田達朗という評論家がいました。

 この異端の天才の遺した言葉を読めば、私たちは、私たちが今日、大切に胸に抱いてあやしている「アート」というものの眉唾の来歴と、欺瞞的で醜悪な貌つきを根底から問い直さざるをえなくなります。

 ディレッタントも、スノッブも、だれもかれもを浮かれさせるアートシーンによって忘れられたまま、それでもそこに、つねに不吉な影のようにつきまとう〈灰燼の眼差〉。それが見つめる未来から、織田達朗は、鬼にでも、悪魔にでもなって戻ってくるでしょう。身震いとともに彼の存在を思いおこし、この場に真の地獄をたぐりよせるための序章となる五編をお送りします。


目次より

●『原爆の図』とその周辺

●存在の断崖にとどまる

●天皇制美術の実体──その万世一系性の批判的推察として

●火のパプテスマの既存において

●〈黒い魔〉の告知への道──灰燼からの出発


本体1,000円+税

A5判・並製(小口折り表紙)・72頁

カラー図版11点、モノクロ図版12点掲載

ISBN978-4-9912228-1-8 C0070

表紙写真「昭和天皇 戦後巡幸(広島)」1947年12月7日撮影(朝日新聞社提供)


著者:織田達朗(おだ たつろう)

1930年、東京都生まれ。美術評論家、詩人。1958年8月、『美術手帖』(美術出版社)の「第三回美術評論募集」において「『原爆の図』とその周辺」が「第一席入選作」となりデビュー。『美術手帖』『みづゑ』(美術出版社)、『三彩』(日本美術出版)等を中心に評論活動を行う。2007年7月19日逝去。著書に『窓と破片:織田達朗評論集』(美術出版社、1972年)、『鈴は照明す:織田達朗詩片集成』(遠方社、2002年)がある。

ある芸術家の精神的遺言

ジャン・クレイ 著

粟津則雄 訳

少し彫刻家の若林奮さんの言葉に耳をかたむけてみましょう。

「1960年代の中頃、ジャン・クレーのジャコメッティへのインタヴューでは、ルーヴルのレンブラントの絵の後に猫が閉じ込められて啼いていたら、自分は迷うことなくレンブラントの絵を切り裂いて、猫を助け出す、と言う。そういうことは実際には起きないと思います。ただそこで言われているのは、レンブラントの絵も大切だけれど、それ以上に生きている猫の生命が大切なものだと端的に話している点です。(……)人間は生命を見つめることができるのだと思います。生命は、ある時は人間が代表することになり、他のものに対して責任を持たなければいけない。生命は別に人間に代表されるものではありませんから、ジャコメッティが気にかけていたのは、生命そのもの、生命全体だと思われます。」

哲学者・前田英樹さんとの『対論◆彫刻空間──物質と思考』からの引用です。長いのでまんなかあたりを省きました。(さらに省いて短くしたものを、今回、書肆山田の鈴木一民さんのご厚意により帯の表4側に入れさせていだだきました。)「代表されるものでは」ないものが、「ある時は」「代表することになる」。そして「責任を持たなければならない」のは「代表されるものでは」ないがゆえにです。この「されない」と「する」のからみあい、重なりあいを安易に棄てたりしないようにしましょう。

小冊子ですが、ぜひ皆さんも、読みながら「う~ん」と頭をかかえてみてください。よろしくニャン。

2021年10月発行

本体1,000円+税

A5判・並製(小口折り表紙)、32頁

ISBN978-4-9912228-0-1 C0071

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総特集:福山知佐子『反絵、触れる、けだもののフラボン』を読む

水声社から刊行された画家・福山知佐子のエッセイ集『反絵、触れる、けだもののフラボン』をめぐる論考を集成。

執筆/阿部弘一(詩人、フランシス・ポンジュ研究)、鵜飼哲(フランス文学・思想)、斎藤恵子(詩人)、佐藤亨(イギリス・ アイルランド文学、アイルランド地域研究)、篠原誠司(足利市立美術館学芸員)、清水壽明(編集者)、

鈴木創士(フランス文学・思想)、田中和生(文学評論)、谷昌親(フランス文学・思想)。花輪和一(漫画家)、穂村弘(歌人)、堀内宏公(音楽評論)、

水沢勉(神奈川県立近代美術館館長)、森島章人(歌人、精神科医)、

吉田文憲(詩人)

2015年7月発行

A5判、104頁

無料

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特集:沢渡朔のプライベートワーク

詩とエッセイのミニコミ誌第2弾。執筆/藤井貞和、沢渡朔、佐藤美奈子、丹木葦夫、花輪和一、福山知佐子、布施直人、吉田文憲  

特集は名作『少女アリス』『ナディア』の写真家・沢渡朔の、画家・福山知佐子とコラボしたプライベートワークについて。

2006年6月発行

A5判、80頁

1000円(税込)

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特集:映画『たった8秒のこの世に花を』

詩とエッセイのミニコミ誌。執筆/稲川方人、岡村民夫、佐藤美奈子、丹木葦夫 、花輪和一、福山知佐子、宮西計三、吉田文憲

特集は詩人・稲川方人が撮った映画『たった8秒のこの世に花を』めぐる論考、出演者の言葉など。

2004年12月

A5判、80頁

1000円(税込)

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